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問題傾向の変化 選択肢の文章が長くなった学校も

記述問題が多い学校 学習院女子や鷗友、暁星も

G 女子学院は大問二題構成に減って記述が増えたというだけではなくて、さらに記述問題のレベルも高まっているということでしたね。豊島岡も記述を増やすという変更がありましたよ。実際、国語は指導している中で感じることはありますか。

H先生 豊島岡はそもそも文章自体が難しいから…。

O先生 基本的に、豊島岡は物語であれば比較的、あの学校を受験するレベルの子にとっては読みやすかったり解きやすいのがあったりします。一方、論説文がちょっと昔からすごく難しいというか経済学とか小学生にはわけがわからないと思われそうなものが出題されます

H先生 言葉自体が難しいですよね?

O先生 そうです。

H先生 内容は、こちらが説明すればなるほどとわかるものであっても、言葉が難しいから生徒が戸惑う。読んだだけで「あ、無理」となるというか、入口で引いてしまう。

O先生 小学生が普通に使う、理解できる範疇をこえたものをどんどん使ってくる。

G なるほど。そういう中で記述も問われていると。そういうことなんですね。わかりました。もともと、これはほんとに記述校だという学校はどこになりますか?Y先生、オーソドックスなものでいいのですが。

Y先生 麻布、武蔵、開成、桜蔭、筑駒。あとは学習院女子、鴎友学園など。

G これらの学校は記述のみ、あるいはほとんど記述しかない学校ということですね。

M先生 駒東は記号選択もそれなりにありますからね。記述も重たいですが。武蔵は記述以外の問題も出されますが、やはり勝負を分けるのは記述問題ですよね。

K先生 暁星もそうですね。選択肢の問題がいくつかありますが、記述問題のほうが圧倒的に多い。

H先生 明大明治も。

G それに芝などが、ほぼ記述になっていったということですね。また、記号ばかりだったところも、城北のように記述問題にシフトしているという傾向があるということですね。ほかにも気になった学校はありますか?

O先生 意外と思われがちなのですが、慶應中等部です。

G それは意外です。

O先生 1問だけ、しかも20字や25字程度なんですけど記述が入りましたね。その後も記述問題が出される傾向は続いています。

Y先生 青山学院も記述の分量がちょっと伸びたというか、けっこう前って選択肢ばっかりで記述が出てもまあ一問で30~40字ぐらいだったのが字数が増えている印象があります。

G なるほど。慶應中等部や青山学院あたりだと、とりあえず出してますみたいな感じには見えますけどね。

H先生 記述校とは言いきれないですね。あ、SFCは結構書かせますよね。

G 確かに。SFCはそうですね。

H先生 後は、さっきは出なかったけれど立教女学院。

Y先生 そうですよね。大問一つあたり二題程度長いやつ。あと2017年から早実でも記述が出ていました。記述なんですけど、必要な言葉がいくつかあってそれを使って書かせるという、2010年ごろの吉祥女子とかであったようなタイプの問題でしたね。

M先生 早稲田実業は、2/1受験校ですが、合格発表日を2/2から2/3に変更しましたからね。じっくり記述問題を採点できるように、という理由でもあったはずです。今後も記述量が増えていく傾向にあるのでしょう。

筑波大附属の問題から変化を感じる

G そういう今までずっと記述が出されていた学校ではないところも記述問題が増えてきたということですね。わかりました。では、説明文でもともとの問題はこうだったけどもこんなのが出てきたというものを聞いてみたいと思います。まずO先生からもともとどういうのがというのがあれば。

O先生 もともとは説明文、論説文では傍線部を踏まえてどういうことかの説明、もしくはなぜこういうことが起きたのかという理由説明、あとは文章全体を踏まえての要旨説明というのがありました。それに加えて、学校によっては本文を踏まえての意見作文を求めるというのがオーソドックスでした。

変化を感じるものとして一番わかりやすいのが、筑波大附属なんですね。グラフから読み取る問題を放送で流して選択肢で問うものが2015年、2016年で出題されていましたが、2017年だとグラフを踏まえてこのデータから読み取れることで、なぜその割合が高くなったのかというのを自分で考えて説明するという問題も出題され、難しくなりました。2018年は選択問題に戻りましたが。

M先生 まさに大学入試改革系だということですね。資料を読み取って理由とかを説明させるというね。

H先生 2018年の開成もそうじゃないですか? プレゼンをしましょうっていう。

O先生 開成の問題の場合、ビジネス系の話でした。恐らく経済学をベースにしたものです。ただ継続して出されるかどうかは疑問です。表から違いを読み取って、販売する機会を失ってしまったから結局はダメなんだというようなところとか、顧客、お客様に結局はそういう不満をもたらしてしまう原因を作ってしまったという視点で説明していくんですけど、そういう視点自体がそもそも小学生にないかなって思って…。

H先生 社会じゃないですか?そういう問題は…。

G うん。社会の方がしっくりくる感じですね。

H先生 社会でそんな話よくしますよね。

G それはありますね。社会だと、むしろ某コンビニチェーンの、廃棄する前提で大量に仕入れて機会損失がないようにするみたいなことは授業の中でもしゃべったりはしますけどね。2018年には上智福岡だか福岡の学校で出ていましたし。そういう教科をまたぐようなのはあるかもしれない。さっきの筑波大附属の問題だって社会でも出されていますから。ああいう、前提知識を必要としない表の読み取りは本当に増えていますよ。

H先生 筑駒も2017年の説明文で、山賊になる鳥と農民になる鳥がいるというグラフが出ましたね。ああいうものも、大学入試改革と言えるのかもしれませんね。ビジュアルで見たものを言葉で説明するのは、大人でもやっぱりすごく難しいですよね。とはいえこれからはそれを受験生に求めてくるのかなって気はしますけど。

O先生 後は、2018年の慶應普通部の問題ですが、要旨記述の後の設問で、文章全体で読み取ったものを表で穴埋めさせるっていう問題を出していて、めずらしいなと思いました。

H先生 「表にまとめなさい」は、筑駒の2010年の土器の説明文とか、2006年のセミの羽化の話とか、それなりに出ている印象はありますね。

O先生 確かに。ただ普通部では、あんまりこういうのがなかった。

H先生 確かに慶應普通部には出るイメージないですね。慶應だと、はっとする問題が出るのはSFC。マークを作りなさい、というような問題も出てましたよね

O先生 SFCはいろんな問題、面白いユニークな問題だしますよね。

M先生 クリームとソフトクリームの違いを百字くらいだかで説明させる問題がありましたね。

ビジュアルで見たものを言語化させていく流れは続いていく

H先生 そうですね。だからやっぱり言葉にしがたいものをできるだけ言葉にしていく練習をしていかなきゃならない。もちろんそれに対するアンチテーゼは出ていますけどね。たとえば『大人になるっておもしろい?』という本。いろんな学校で出たし、私たちもちょうど六年の教材でやったばかりですが、雄弁ってそんなにいいことだろうか、むしろ沈黙こそがいろんなことが語れるんだ、という文章です。自分なんかは自戒を込めて思うんですけど、立て板に水のようにしゃべればしゃべるほどいいという風潮はどうなのと。

G それはどういうとこで出たのですか?

H先生 2016年品川女子、桜美林、2017豊島岡女子、あと東京以外でも何校か。清水眞砂子なのでオーソドックスに出る著者ではあります。別の作品ですがJGでも2016年に出ていますね。『幸福に驚く力』という話。

M先生 でも、ビジュアルで見たものを文章化させていくという流れは今後も続いていくし、2018年には久留米附設で佐藤雅彦の『プチ哲学』の一シーンを記述させるものがありましたよね。昔からSFCとかそういうところで出ていたものが広まっていったような印象があります。

H先生 あと、ビジュアルで見たものにつながるけれども、先ほども出た「たとえを翻訳させる」という問い方もそうだと思うんですよね。直観に訴えてくるものを、じゃああなたはどこまで言葉にできますか? と。

G しなくてもいいんじゃないのと思いますけどね。

H先生 言葉にすることによって失われるものっていっぱいあると思うんですよね。これもやはり自戒を込めて。

国語座談会第3回(4)に続きます。次回が最終回です。7/12頃公開いたします。

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