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問題傾向の変化 選択肢の文章が長くなった学校も

芝の記述の難度が大幅に高まった背景

O先生 では、続いて物語で意見作文や、続きを書きなさいといったような問題について取り上げたいと思います。

H先生 まさに2017年の芝ですね。ナオミの言葉を想像して書きなさいというもので、作文ほど長くはありませんが。

Y先生 これはどちらかというと省略の説明じゃないかな?自由な発想ではなく、本文を踏まえて明示されていないところを考えて説明する。芝だと2016年のライオンの話でも同様の問題が出ていると思います。

K先生 世田谷学園でありましたね。2018年の1次では本文に出てくる内容について、この後を想像し、書かせる問題が出ていました。「書物を通じて」という条件があるので、自由に想像するわけではありませんが。

H先生 このタイプの問題の採点基準をつくるの、難しいですよね。

O先生 おそらく、ある程度の本文の内容を踏まえた方向性があって、それにずれていなければ得点しやすいということではないのかな、と捉えています。

M先生 1995年のラ・サールもありましたね。日記の穴埋めみたいな感じで。でも前後から話が分かるんですよ。

Y先生 ちゃんとその手前からの方をしっかり読んでいると書くべき内容が見える。

M先生 そうそう。一見、自由な日記を書くのかと思いきや、結局は読解なのかという問題でしたね。受験生は、面白おかしく自由に書いて、そうするとほとんど得点できないというタイプの問題でした。自由記述に見えて、実は読解という問題はよくありますよね。生徒にも注意を促さないといけない。

G ほかに何か物語の記述として最近こういうものがあるとか、いかがでしょうか。

Y先生 2016年の芝のライオンの話は、前回(第2回)の座談会の麻布と重なる寓話的な話なんですけれども、『二番目の悪者』というタイトルと文章内容を重ねてどういうことなんだろうと考えさせて書かせるというものでした。本文の内容を読み取り、たとえの内容を理解した上でそれをもとに作者の意見を考える。ちょっと特徴的かなと思いました。

H先生 この芝の問題なんかは、寓話だと気づけないともう終わるってことですよね?ただライオンとペンギンとかの話だっていう風にしかとらえられなかったら。

G なるほど。もうそこで読解ができない。

Y先生 一応それをサポートするために一つの問題で、新しい王様が誕生したっていうところに傍線を引いて、その政治によってどうなるかってことを聞くんですけど、設問が「どうなってしまったか」っていう聞き方をしているんです。

G ヒントですね。

Y先生 そうです。この聞き方で、これは悪い結果が起きたということが想像できるので、そこから考えてほしい、みたいなところがわかるような設問になっている。

M先生 親切というか。よく6年生の入試演習が始まる頃になると授業でも繰り返し話す、設問がヒントになっているというタイプですね。

O先生 芝の記述は、どんどんレベルが上がっている感じですよね。

Y先生 上がってますね。

M先生 やっぱりそれは芝の国語がほぼ記述になってから、平均点が高く出すぎたってのがあるんじゃないですかね。最初の時、敢えて採点基準を緩くするという学校の方針があって、それ自体は国語が苦手でも、本文をしっかり読んでまともな日本語を書ければかなり得点できる、いい取り組みだったのですが。それでもすごく平均点が高くて、最高点が100点に近い時もありましたよね。漢字以外オール記述なのにっていうことで、芝の先生としてはもう少し難易度上げようとか、記述の添削も少し厳しくつけていくっていう方向になったのでしょうね。

Y先生 ほかの科目とのバランスもありますからね。

M先生 あの時は、正直に言って、芝に合格させやすかったですね。国語がかなり苦手でも、ちゃんと戦える得点までは取らせることができたので。

H先生 芝が記述を全面的に導入したあたりだと、オーソドックスなことでよかったから、割とストレートに、こう書けばいいよね、本文にこうあるからこう書けるよねと言えたんですけど。今だと、これってどういう意味だと思う?みたいな少なくともワンクッションおいて生徒に問いかけていかないと、理解して自分の力で解けるようにはならないし、そういう思考の流れが必要なんだろうなという問題になっていますよね。

G 芝の国語はもう難易度が高まっていると言っていいということですね。では、逆に言うと過去問の五、六年前の物というのはあんまり参考にならなくなっているんですかね?

H先生 というかできて当たり前。本文中にヒントがあるんだからここを読んだ上で解いてね、という。今はじゃあもう一段階深めてくれという感じです。

G なるほど。前はそこまで問われてなかったってことですか?

K先生 どちらかというと、テクニックで処理できてしまえる問題だったと思います。傍線部をちょっと伸ばしたら指示語があるからその前を見てまとめることで解けちゃう、みたいな。

Y先生 自分の印象だと、問の一番とか頭の方は、結構今でも解きやすいんですけど、以前は各大問にある四問のうち、一番から四番まで比較的解きやすかったですね。もちろん四番になると、多少はまとめる必要があったのですが、それでも後ろの方になったらちょっとしんどいな、ぐらいだったんです。今も大問ごとにだいたい四問ずつぐらいあるんですけど、三番四番ぐらいになってくると結構考えさせる問題が増えている印象があります。

M先生 記述が書けないとそもそも受験できない、でもこれまでは何とか読解力が不足していても書く練習を積み重ねて対応できた。でも今は、設問まで高いレベルで要求されるようになってきていますから、対策は大変です。

H先生 それで言ったら筑駒なんかはもう記号なくしましたからね。2018年から全部記述になったので。

G 記述が増えている。明らかに記述化されたというのは芝、2018年以降の筑駒がありましたけれどもほかにはなにか?この学校でというのはありますか?

大学入試改革の影響か 城北も記述校に

O先生 城北です。

G 城北もですか?

O先生 2017年から記述メインになっているんですけど。前までは選択問題や抜き出しが多くて。でも、学校説明会の中で記述問題を出していくという宣言をされて。

H先生 芝と同じ理由ですかね?城北もこれまで比較的対策はしやすかったと思うので、苦労するなあと。

O先生 記号選択だと、差がつかなくなってきたのもあると思います。あとやっぱり学校側として自分の考えを書ける子にきてほしいという要求があるのだと思います。

H先生 大学入試改革を見据えてというのもあるんじゃないですかね。書けなきゃどうにもならない、たぶんあと中学に入った時に記号ばっかり選べる子がいても、授業としてそんなに面白くなさそうじゃないですか。書かせた方がより深まるだろうし。

G そういう中では記述化の方向に向かっている。

H先生 広尾も100字とか110字とか出しますね。2018年のテーマには宗教と哲学がありました。

G あそこは難しすぎる問題を出すきらいがありますよね。徐々に洗練されていくと思いますが。

O先生 後は学習院の中等科。男子の方ですけど、2015年あたりから物語文の主題を要約する記述が。字数は少ないが、今まで学習院の中等科の問題でこのような要約記述はあまり見なかった。また2017年から八十字以内で要旨をまとめる記述も出ていて。

G 何をまとめる問題なのですか?

O先生 筆者の主張を要約して説明しなさいという問題です。前から記述問題は出ていましたが、問われているものや難易度が変わってきている印象があります。

G ほかに記述が増えたという方向性でいうと?

O先生 女子学院。文章題三題構成から二題構成になったというのはけっこう前からそうなんですけど、それでも二題構成になってからも女子学院の問題っていうのはどちらかというと記述でも三十字程度で収まるような小型の記述が多かった。それが、字数制限は無いのですが、まとめるとだいたい六十字とか八十字くらいになるような記述問題が出されていますし、2016年あたりからは、記述問題が七、八問程度の問題数になって。

M先生 試験時間40分ですからね。タイトですよね。筑駒も同様ですが。

「わかりやすく説明しなさい」という設問が持つ意味

O先生 さらに開成とか、最近の女子学院でもそうなんですけど、わかりやすくって言葉を設問文の条件に入れていて、わかりやすく説明しなさいという聞き方をしている。ということは、文中の言葉をそのまま使ったらアウトということなので、自分の言葉を入れたり、あるいはそのまま言い換えたりしてまとめていくっていう記述に変わってきました。

G 「わかりやすく」とあったら、そういう暗黙のルールみたいものがあるってことですか?

O先生 そうですね。開成なんかは、基本的に「わかりやすく」を使ってきます。自分の言葉で、論説文であったとしても文中の言葉をただまとめるのではだめで、それを踏まえて言い換えて説明していかなくてはならないわけです。

H先生 それどういうことですかという設問と同じ方向性ではありますよね。どういうことかをわかっているかどうかを聞くんじゃなくて、わかっていることをきっちり伝えられるかどうか。これが問われているし、生徒に伝えていかなければならないと思います。

M先生 結局は、言い換える力。当たり前ですが指導もそこに尽きますね。

H先生 わかってないであろう人に説明できる力。入試の場合、採点者に対してということになるんですけども。わかるかどうかでいったら生徒はある程度わかっていて、じゃあみんなが苦労するのというのは、とくに物語だと、わかるんだけどなんて書いたらいいのかわからない。こういう感覚はわかるけど言語化するとなると難しいっていうことになるんです。それで、そういう時にやっぱり語彙が多いのはすごい強みになるし、たとえば前にこういう物語をやった時には先生がこう説明をしたからあの言葉を使ってみようとか。そういう風に記憶に残る言葉を私たちが授業でも日常でも発していかなければならない。そう思っています。

国語座談会第3回(3)に続きます。7/9頃公開いたします。

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